未経験から駆け抜けた3年。そこで辿り着いたカフェ「Silk Tree」のカタチ

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自分の想いを形にするため、小さな一歩を踏み出そうとしているアナタへ

2026年10月で3周年を迎える「コーヒーと雑貨 Silk Tree」

医療現場から未経験で飛び込み、「まずは3年」と無我夢中で駆け抜けてきた。
気づけば間借り営業や展示会、夜営業など様々なチャレンジを重ね、今では自分の想いを形にしようとする人から相談を寄せられることも増えてきた。

綿密な計画や十分な修行経験があったわけではない。
それでも一歩を踏み出し、試行錯誤の中で日々を過ごしてきた。

永井等(左)、都穂美(右)、ポム|コーヒーと雑貨 Silk Tree(@silk_tree_coffee
医療現場に従事していた永井さんご夫婦が、2023年10月にオープンしたカフェ。

通常のカフェ営業にとどまらず、展示会や夜営業、他事業者への間貸しなど、多様なスタイルで喜びが重なり合う温かな空間を作っている。
愛犬のポムちゃんが店長を務める日もあるので最新情報はInstagramをチェック。

無知だからこそ飛び込めた二人のリアルは、自分の想いを形にするため小さな一歩を踏み出そうとしているアナタの背中を、優しく力強く押してくれるはずだ。

「1年で終わってもいい」から始まった手探りの日々でも変わらなかった想い

医療現場に従事していた永井さんご夫婦が、未経験でカフェ経営を始めて間もなく3年が経過する。

これだけ続けられるとは思わなかったというのが正直な気持ちです。1年で終わってもしょうがないと思っていましたから」

等さんはこう振り返る。

「飲食経験を重ねて、資金も貯めて、何年もの構想を経て始まったってわけじゃないですから。『明日どうしよう』って考えながら、とにかく必死に駆け抜けてきた感覚ですね」(都穂美さん)

記憶もないほど目まぐるしい日々。
理想の空間づくりの裏側には、想像以上の泥臭い現実が待っていた。

「新商品の試作をして、写真を撮って、SNSを更新して、さらに仕込みと準備を整えてお金も管理する。カフェって、裏でこんなに色々なことをしなきゃいけないんだって思いましたね」(都穂美さん)

「特に価格設定は難しかったです。自分たちが作った商品の価値がよくわからなくて『本当にこの値段でいいのかな』と、最初は自信が持てませんでした」(等さん)

それでも、二人の中にブレない共通の想いがあった。

前オーナーからバトンを引き継いだこの空間。ドアを開けるとコーヒーの香りがフワッと広がる。
店前には駐車場があり、二階は畳敷の小上がりになっているため、お子様連れでも安心して利用できるのが嬉しい。

「ここを借りた時点で、居心地の良さや落ち着く雰囲気というコンセプトだけは継続していきたいなって思ってました」(都穂美さん)

以前、この場所で営まれていたMisaki coffee&roasteryさんは、まさに二人が「また訪れたい」と思える憧れの空間だったという。

「自分たちがもう一回行きたいと思うお店は、凄くオシャレとか凄く美味しいよりも、居心地が良くて店主さんの雰囲気や人柄が素敵な場所。ここを紹介されたとき『ここなら、そういった良い雰囲気の場所を作れるかもしれない』と思えたんです」(等さん)

前職を辞めてから、わずか1〜2ヶ月後にスタートさせた初めてのカフェ経営。
手探りで駆け抜けてきた3年間の答えは、日々お店に訪れるお客様の姿の中にあった。

「この空間に少し長居してくれて、ゆっくりしてくれている方がいるので、方向性としては間違ってないのかなとは思いますけどね」(等さん)

完璧な計画も十分な飲食経験もなかった。
それでも、自分たちが思い描く空間を作るために過ごしてきた日々は、確実に形になっていた。

「やるしかない」と思わせてくれた家族の姿と忘れられないあの時の感覚

看板メニューの「トマトシフォン」が完成したのは、なんと開店の前日。

十分な準備をして臨んだわけではないため、オープン当初の1年目はとにかくバタバタの連続だった。

「それでも、光が差し込む窓側の席が好きな人もいれば、必ずカウンター席に座る人もいて」(都穂美さん)

柔らかな日差しが差し込む店内は、ゆったりとした時間が流れている。一人で静かにカフェタイムを楽しみたい方にもピッタリ。

思い思いのお気に入りスポットで寛ぐお客様の姿を見ると、「自分たちがめざす空間」という大筋からは決して外れていないことを実感させてくれる。  

そんな二人だが、特に等さんは本来「慎重に慎重を重ねて、石橋を叩く」タイプだという。
そんな慎重派が、なぜ長年勤めた安定した病院勤務を捨て、未経験のカフェ経営へと舵を切ることができたのか。  

「無知だったからですね。知りすぎていたら、やっていなかったかもしれない」(等さん)  

そう冗談めかして話す等さんの隣で、都穂美さんが静かに口を開く。  

「長男の存在が大きかったんです」  

そこには、家族の物語があった。  

「高校生から大学生、就職にかけて、彼は物凄いスピードで自分の道を歩み始めたんです。もう自由に。就きたい仕事を自分で開拓して掴み取っていく姿に、親ながら感化されたんですよね。自分の中の世界を変えていく息子の姿を見て、『自分もできるかもしれない』って」(都穂美さん) 

家族旅行での一枚。お子さんたちは親元を離れ、東京で自身の道を歩む。

若くして子育てを始めた二人にとって、子どもたちの成長と旅立ちは「第二の人生」へと一歩を踏み出すきっかけとなった。

さらに、物件との出会いも奇跡的だった。  

「実は、以前に違う場所で居抜きのお話があったんです。だけどその話が立ち消えになって、この物件に繋がって。1年の間に2回もド素人の私たちに居抜きのお話が来るなんて、奇跡的でした」(都穂美さん) 

 前オーナーから説明を受けた後に再訪した時の様子は、今でも鮮明に覚えている。  

「2回目に訪れた時、お店に入った瞬間から気が違うというか。なんだか建物に迎え入れられたような感覚があったんです。そしたら等さんもまったく同じことを感じていて。『この場所なら大丈夫かもしれない』と思えたんですよね」(都穂美さん)  

自分たちの想いにフィットする場所との巡り合い、子どもの旅立ち、いくつものタイミングが重なり合い、二人は未来へ向けて一歩を踏み出したのだった。

「好き」と「大切」が重なり合う。温かくて優しい空間が生んだ繋がりと出会い

Silk Treeは、一般的なカフェの枠組みを超えた多彩なスタイルを取っている。  

「二階をフリースペースとしてお貸しすることは前オーナー時代から行われていたのですが、この空間が本当に素敵だから『キャンドルを灯す夜営業も絶対にいいよね』って話していて」(都穂美さん)  

オープンから2ヶ月後の12月、初めてのイベントである夜営業『HYGGE(ヒュッゲ)』を開催した。 

「やってみたら、想像以上にご好評をいただいて。昼間はなかなか来られない方も、『夜の特別な時間なら行ってみようかな』と足を運んでくださるんです」  (都穂美さん)

自分たちが作る空間が、さらに多くの方に届いたことを実感する瞬間だった。  

「お店を知ってもらうきっかけの種まきになりましたね」(都穂美さん)

通常のカフェ営業に加えて、夜営業「HYGGE(ヒュッゲ)」や朝営業「noll(ノル)」、その他イベントも多数開催されている。
毎月の営業スケジュールはInstagramに投稿されるので要チェック。

その後、朝の時間を届ける『noll(ノル)』のスタートなど、次々と新しい試みを形にしていく。  

「病院勤務だった頃は、何か新しいことを始めるのにも膨大な時間と手続きが必要でした。でも今は、二人で納得すればすぐに試せる。ダメだったらボツにすればいいだけですから」(都穂美さん)

どこか解放されたような軽やかさでアクションを起こす二人。
その試みが、思いがけない出会いを引き寄せていく。  

「私たちとは少し違うコンセプトを持つ人に入ってもらうと、Silk Treeだけでは出会えなかったはずのお客様も足を運んでくださるんです」(都穂美さん)  

間貸し営業を検討していた頃、以前から客として通ってくれていた「とおりみち(@to_rimichi0121)」のまる子さんが間借りカフェを営んでいることを知り、仕組みを相談したことがきっかけで定期的な間借り営業がスタートした。  

人との繋がりが、さらなる素敵な出会いを生んでいった。 

店長を務める大人気の看板犬・ポムちゃん。「家ではすぐに食べ物に飛びつく子なんですけど、お店ではわきまえているというかお利口さんなんです」

ただし、二人は「誰にでも場所を貸し出す」わけではない。  

「この場所が本当に好きで、大切にしたいからこそ、誰でもいいわけではないんです。出店してくれる方の想いや人柄、そしてその人を介して来てくださるお客様にSilk Treeの良さを還元できるかを大切にしています」(都穂美さん)

「自由に使ってくださいという気持ちと同時に、ここでやってもらう以上は自分たちにも責任があるので、使ってくれる人も、来てくださるお客様も気持ちよく過ごせるようにしたいんです」(等さん)

自分が一歩を踏み出し、手探りで守ってきた大切な場所。

その場所を自分たちの中に閉じ込めるのではなく、解放することで様々な繋がりや出会いが生まれ、温かさと優しさが次々と重なり合っていく。

誰もが誰かの力を借りる。そうして繋がりが生まれたCafe「Silk Tree」

「今後こういうことをやって、ゆくゆくはカフェもやりたいと思ってるんですけど…」  

様々な繋がりと出会いの中で可能性を広げてきたSilk Treeのもとには、これから何かにチャレンジしようとする人たちが自然と相談に訪れる。  

「頑張ってる人を応援したいっていう想いは二人ともあって。この場所をきっかけにステップアップしていく姿を見られるのは嬉しいですね。なんか、親心みたいな感覚」(都穂美さん)  

かつての二人も、まさにこれから未経験の世界に飛び込もうとするチャレンジャーだった。
その始まりの日の記憶を、今でも忘れていない。  

「前のオーナーさんからも同じようなことを言われたんです。『一からお金をかけて始めるんじゃなくて、居抜きでこの場所で始められるっていうのは、最初のステップとしてすごくいいんじゃないか』って」(等さん) 

Misakiコーヒーさんから引き継いだ焙煎機。等さんは「横でしゃがみ込んで焙煎している時間」が好きだという。

そして、「とりあえず3年」という想いの中で必死に日々を駆け抜けてきた。  

「だから、うちらが何かをしてあげているなんてとても思えないんですよね。逆に、自分たちも色んな人の力を借りている側ですから」(等さん)  

カフェのテーブルに乗るものはツールであって、結局は私たちも含めた人と人との繋がりによって、みんなの喜びが重なり合う場所になればいいなって思ってます」(都穂美さん)  

Silk Tree――和名、ネムノキ。
漢字では「合歓木」と書き、「人と人との喜びが重なり合う」という意味を持っている。

編集後記

二人にとっても、お店にとっても欠かすことのできない存在が愛犬のポムちゃんだ。

「私はポムちゃんにすごく感謝していて。だから、お店の名前もポムちゃんに関する言葉を入れたかったんです」と話す都穂美さん。
店内の家具にも一つひとつ面白いストーリーがあり、インタビューしなければ知り得なかったことばかりだった。

実は、今回取材の機会をいただいたのも人との繋がりから。
そして、Hundred Workers初イベント「EPISODE MARCHE」の開催に繋がっていった。

改めて、関わってくださった皆様に心より感謝申し上げます。

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この記事を書いた人

\元サラリーマン教師/
▶︎多様な分野で活躍する人=HUNDRED WORKERSへインタビュー
▶︎学校では学べないマインドセット・スキルセットをお届け

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