「伝えたいことが、ちゃんと伝わっているだろうか」
「自分の話って、しっかり相手に伝わっているんだろうか」
相手のリアクションが薄かったり、刺さってない空気感に不安を感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
本記事では、2010年にTEDで紹介され、全世界で数千万回再生されたビジネスリーダー必見のプレゼンとして語り継がれている「ゴールデンサークル理論」を紹介します。
優れたリーダーのプレゼンテーションとは___
人の感情に刺さる話し方・伝え方とは___
ゴールデンサークル理論の仕組みを理解して、ご自身のプレゼンテーションやセールスシーンのみならず、普段のコミュニケーションなどに様々な場面に生かしてみてください。
感情に届けるために、“人間の脳の構造”を理解する
「人は理屈では動かない。感情で動く。」
この言葉を見て、何となく納得できる人も多いのではないでしょうか。
実はこの言葉の通り、人間の脳は感情的に動くようにできています。その理由を探るために、脳の仕組みをみてみましょう。
まず、脳の中心部に近い“大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)”は、感情や本能、記憶を司る「感じる脳」です。
人間の感情や快・不快を生み出す領域です。「好き・嫌い」や「何となくいい・何となくいや」といった、理屈ではない直感的な反応はすべて大脳辺縁系が刺激されて生み出されます。
一方、“大脳新皮質(だいのうしんひしつ)”は脳が後発的に進化した外側の部分で、理論や言語、分析などを司る「考える脳」です。相手が何を言っているのか考えたり、どういう仕組みなのか考えるといった理屈の処理は、この大脳新皮質で行われています。
そして、この2つの部分が反応する順番がポイントです。
人間の脳は中心部に近い部分から反応していきます。つまり、大脳辺縁系で感じて、大脳新皮質で理解するのです。話し方・伝え方も、この順番に合わせるとスムーズに相手の心と頭に届くのです。逆に、理屈っぽいことから話し始めると情報は理解できても、響かない・届かないといったもったいない状態になってしまいます。
脳の構造を理解して、人は感情が動いた後に理解がついてくることを覚えておきましょう。
“WHY”から始めよ___感情に届く「ゴールデンサークル理論」
人間の脳の構造に合わせた、感情に届く話し方のフレームに、サイモン・シネック氏が提唱した「ゴールデンサークル理論」があります。この理論では、話す順番を以下の3つに分類しています。
①WHY(なぜ)
- 行動や思考の根本理由。
- 思い、信念
- なぜやるのか、どんな未来を作りたいのか
感情を司る“大脳辺縁系”に届くのは、このWHY(なぜ)の部分です。共感や興味、信頼はここから生まれるのです。強力なWHY(なぜ)ほど“共鳴の起点”となり、この後に続くHOW(どうやって)・WHAT(何を)が相手の心に深く刺さりやすくなります。
②HOW(どうやって)
- WHY(なぜ)を実現するための方法論
- 強みやこだわり、差別化できるポイント
HOW(どうやって)は、WHY(なぜ)を実現するための手段であり、相手が他との違いを感じる部分です。WHY(なぜ)との関係性が強かったり、整合性が取れていると強力なHOW(どうやって)になるでしょう。
③WHAT(何を)
- 具体的な商品、サービス
- HOW(どうやって)を現実にするための方法
WHAT(何を)は、事実の説明であり、大脳新皮質が処理する論理的、分析的な情報です。冷静な判断や失敗を回避しようとする働きがあります。つまり、「本当に必要か?」「値段は高くないか?」「信じて大丈夫?」といった思考が起動するのです。
「WHY → HOW → WHAT」という順番は、先ほど紹介した大脳辺縁系 → 大脳新皮質という脳の構造とも一致しています。だからこそ、自然と感情に届き、理解へとつながり、行動を生むのです。それが、「伝える」ではなく、「届く」ための順番の秘密なのです。
世界で最も有名な“WHY”から始まるプレゼンテーション
この理論を象徴する事例のひとつが、スティーブ・ジョブズによるAppleのプレゼンテーションです。彼は、商品のスペックや特徴(WHAT)から話し始めることはほとんどありませんでした。
まず最初に語られるのは、Appleというブランドの“思想”です。
「私たちは、現状を打ち破り、物事の考え方を変えるために存在しています。」(WHY)
「それを実現するために、美しく直感的な製品をデザインしています。」(HOW)
「そしてこれが、新しいMacBookです。」(WHAT)
この順番で語られると、製品が単なるモノではなく、“想いがカタチになったもの”として、人の心に届くようになります。
人は“何をするか”ではなく、“なぜするのか”に共感して動く
ゴールデンサークル理論を自分のものとして使うためには、まず“WHY=あなたの想い”を見つけることが重要です。
「なぜそれをやるのか?」
「どんな未来をつくりたいのか?」
「何に怒りや違和感を感じるのか?」
そんな問いに、自分の中で少しずつ答えていくことが、“共鳴の起点”をつくる第一歩になります。
まずは身近な自己紹介やプレゼンでWHYから始める練習をしてみましょう!