HUNDRED WORKERS

インタビュー

起業1年目のリアル___“感謝の連鎖”と“家族の歴史”が描くビジョン

“自らの道を歩む人”を見て、「羨ましい」と思うアナタへ。

新卒で就職。懸命に仕事と向き合い、気づけばそれなりのポストに就いた。
給料も悪くない。やりがいも感じている。なのに——何かが違う。
一方、やりたいことをやっている人は輝いて見える。格好良く見える。羨ましく見える。

そんなアナタに届けたい。
月並みかもしれないが、感謝の気持ちを大切に行動し続けた結果、道が開けていった人の姿を。

普通の人生を歩んでいた人が、なぜ起業という険しい道を選んだのか。
その背景には、消えかける家族の歴史があった。容赦無く襲いかかる現実にも、感謝の連鎖で乗り越え、小さくても力強く“自らの道”を歩む人の姿は、アナタの目にどう映るだろうか。

社会人1年目に芽生えた、“感謝の連鎖”の原点

2025年2月、小さな会社が1つ誕生した。
産業廃棄物(以下、産廃)の収集運搬を手がける“株式会社BLANC WORKS(ブランワークス)”だ。

代表の佐々木さんは、かつて食品メーカーに新卒で入社したセールスパーソンだった。
入社から3ヶ月、キャリアは思いがけない形で動き出す。ちょっとしたトラブルで、突然得意先を任されることになった。

「『できないと思うけど担当してくれ』って言われていきなり。正直何もわからなくて。本当に何もわかんない…。」

佐々木さんの口調から、当時の戸惑いが伝わってくる。
その矢先、事件が起きた。

「いきなり任された得意先から、大量に発注が上がってきて。でも、物流の人から『商品全然ないよ』って言われて。それをお客さんに伝えたら激怒されて。」

「もうとにかく平謝りして。とにかく凹みました。でも、凹んでもどうしようもできないし。とにかく謝って…。」

それでも逃げなかった。分からないながらも真摯に、懸命に対応した。そんな佐々木さんの姿を、クライアントは見ていた。

「毎月商談あるんですけど、商談に行ったら何かと気にかけて下さって。」
「その3ヶ月後ぐらいにはとても良くしてくれて、“商品持ってきなよ!”みたいな。“提案してあげるから!”って。すごいいい人でした。」
「いや、人っていいなあって。月並みだけど、人の温かさとか有り難さみたいなのが…。」

入社から激動の半年を乗り越えた佐々木さんは、5年目を迎えると歴代最年少で最重要クライアントを任されるまでに成長する。
たった5年目の人材が大抜擢された裏には、今回もお客様からの「いや〜よくやってくれてるわ!」という温かい言葉があった。

「できるだけ人から嫌われたくないので、僕は。」

そう語る佐々木さんの言葉からは、感謝の言葉や気持ちを感謝の姿勢で返そうとする姿勢が見えた。
感謝の連鎖が活動のエンジンになっているのだ。

「そうですね。それは、かつての上司の影響。“感謝の気持ち大切にしろ”って言われたので。それを意識したんだと思います。言われたその時は特に意識してなかったけど、確かにそうだよなって思って。」
「当然、今なんかは仕事頂いてるわけだから、感謝しかない。その人たちが、仕事をくれないと僕は生きていけないから。“仕事くれてありがとうございます!”って感じ。」
「“何でこんなことしなくちゃいけないんだよ!”って思うよりも、“これだけ仕事くれてありがたい!”って気持ちの方が強いから、そういう(何でこんなことしなくちゃいけないんだよ)思考にあまりならないっていう。」

社会人1年目に感じた“人の温かさ、有り難さ”。その体験が、佐々木さんの人生に“感謝の連鎖”を作り出す。

人生1度きり___消えかける“家族の歴史”のために…

佐々木さんは高校・大学と、世界最古の球技とも言われる陸上ホッケーに打ち込んできた。その腕前は、北海道代表として国体に出場するほどだ。同じ代表チームの先輩に仕事の悩みを打ち明ける中で、新しい世界でチャレンジしたいという気持ちが芽生える。

それが、産廃との出会いだった。

「産廃自体は楽しかったです。汚いし、汚れるし、たまに“キツイなぁ”って思うこともあるんだけど。感謝される仕事なんです。(ゴミが)汚いってわかってるから、“回収してくれてありがとう”って。」

未経験の世界に飛び込んだ佐々木さんの支えは、やっぱり“感謝”だった。

「建築現場は、作れば作るほど、壊せば壊すほどゴミが出る。ゴミを下げないと次の作業ができない。(ゴミを)下げるだけで感謝される。“ありがとうございます!”って。感謝されることにやりがいを感じました。」

新たにチャレンジした産廃の世界でも、“感謝の連鎖”が続いた。
そんな時、またしても思いがけない出来事が起こる。

高校時代から付き合ってきたパートナーの実家は、創業66年の下町の洋食屋“味かつ”。

有名ホテルのレストランで修行を積んだ義父が作る絶品メンチカツは多くの人に愛され、地域イベントにも参加するほどの人気だった。

「義父さんに病気が見つかって。このままいったら店ヤバいな…。店どうにかしたいな…って。」
「産廃は続けたい。けど、味かつにも関わりたい。」
「じゃ、自分でやろうみたいな。」

静かに語られた起業のきっかけには、感謝をダイレクトに感じられる仕事への魅力と、消えかける家族の歴史を何とか守りたいという想いがあった。
勤めていた産廃の会社を退社。自身で会社を立ち上げ、新たなチャレンジへと歩み出した。

「当然、直にやりがいや嬉しさを感じるし、人の繋がりの大切さみたいなものをめっちゃ感じれてるし、本当に恵まれてるなって思います。」

会社を立ち上げてからの日々を語る表情には、充実感が滲み出ていた。

「従業員で働いている時より自分で立ち上げた時のほうが嬉しさも倍増。自分が考えた会社の名前の評価が上がってるって思うとすごく嬉しい。」

「起業して良かったと思うか?」と尋ねると力強く一言。
「良かった。」

そして、こう続けた。

「自分の人生だし、人生1回きりしかないんだからさ、後悔しないように挑戦しようって。その思いで動いたから。」

静かに放たれたその言葉には、感謝と決意の両方が感じられた。
しかし、この言葉の裏には、もう1つの物語があった。

襲いかかる現実___途切れかけた“感謝の連鎖”を繋ぎ止めたものは…

お客様からの感謝をダイレクトに感じられる産廃の仕事を続けたい。さらに、パートナーの実家が営む洋食屋さん“味かつ”も支えたい。全く考えてなかった起業を決意して動き出した佐々木さんだったが、言葉の端々からは、自分の想いを形にすることの難しさが滲む。

実は、産廃の世界を教えてくれた会社を、円満とはいかない形で退社することになってしまったのだ。人との繋がりや感謝を大切にしてきた佐々木さんにとって、本意とは違う形でのスタートになった。この影響は決して小さくなかった。

会社を立ち上げた当初、ゴミを収集した後に運ぶ処分場との契約で、どうしても使いたい場所があった。それは、前の会社でも使用していた処分場だ。

「そこの処分場の人たちもめっちゃいい人たちばっかで、その人たちと一緒にゴミを降ろしてるんですけど。前の会社でそこ使ってたので、僕もどうしてもそこ使いたいって思って、そこに契約結んでもらいました。」

しかし、現実は厳しかった。
本社に挨拶に行った際、こう声をかけられた。

「揉めたしょ?」

処分場側も、起業の裏で何かあったことを感じていた。

「新規だからここからじゃないと無理だって。全く信用してくれてなかった…。」

現実は容赦無く佐々木さんを追い詰める。資金繰りもギリギリの状態が続いた。

「めちゃくちゃ大変だった。家族に“金貸して”って言って借りたりとかしてたので。結構ギリギリだった。」

当時の状況を生々しく語る佐々木さん。それでも変わらなかったのは、“感謝の気持ち”だった。そして、その姿勢はやっぱり伝わっていた。“感謝の連鎖”は途切れていなかったのだ。

「現場からの評価も聞いてるし、“来月から変えるかい”って言ってくれて。」

信用を失っていたはずの処分場から、契約内容を再考する旨の言葉をもらった。

「ちゃんとみててくれたんだと思って。独立して良かった〜って思って、その瞬間。会社の取り組みをしっかり評価してくれたことがすごく嬉しかった。」
「本当にめっちゃ嬉しかった、その時…。」

うっすらと目を潤ませながら当時を振り返る佐々木さんの表情が、すべてを物語っていた。

「人の繋がりの大切さみたいなものをめっちゃ感じれてるし、本当に恵まれてるなって思います。頑張ってきて良かった…。嬉しかったな…。」

BLANC WORKSが描くビジョン___「マジ感謝です。」

世の中には、やりたいことはあるけど一歩踏み出せない人がいる。そんな人たちに、佐々木さんはこう語る。

「失敗しても仕事はいっぱいあるじゃないですか。だからまずは、やっとけば良かったなってならないようにチャレンジしたほうがいい。」

しかし、こうも言った。

「ビジョン。どこまで明確になってるか。」
「いるんですよ、身近で。何かやりたいって言ってる人。で、“何やるの?”って聞いても、“いや、何やるかは決まってないですけど…。起業したいんです。”って。」
「その段階だとかなりリスクあるなと。明確じゃないと、始めてから資金繰りとかでかなり焦ることになるので、まだやらないほうがいいんじゃないって思います。もっと明確な目的を考えてからの方がいいんじゃないかなと。」
「闇雲にチャレンジした方がいいとは思わない。チャレンジっていうか無謀。もしかしたら成功するかもしれないけど。」
「よく調べた方がいい、やりたいことを。意外とお金も時間もかかるから、始めるまでに。僕も感じたので、会社始めるまでに。」

起業1年目のリアルな言葉には、重みがあった。
そこで、BLANC WORKSのビジョンについて聞いてみた。

「まずはうちの会社で味かつを経営したい。(これまで)サポートは、わずかしかできてないんだけど、そこをもっと踏み込んでやってく。」
「産廃は、従業員と車両を増やしてやりたいなって。会社を始めた時に、やるなら年商1億は目指したいなって思ってて。それをできれば3年以内にやりたいです。」

そして、力強い口調でこう締めくくった。

「信用を損なわないように、人との繋がりを大切に、感謝の気持ちを持って進むだけだなって。マジ感謝です。」

一度途切れかけた“感謝の連鎖”は、より強固なものとなりBLANC WORKSは新たな道を歩む。

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